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2014年10月14日 (火)

句集「橡並木」

俳誌・白魚火(しらをび)副主宰である青木華都子さんから、句集「橡並木」を頂いた。

Photo 著者の「あとがき」に、『句集「橡並木」は私の第三句集です。平成十八年から平成二十五年までの句をまとめたものです。奇しくも今年(註:平成二十六年)は俳誌「白魚火」通巻七百号記念の年で、……自分で自分を励ます意味も兼ねて、第三句集を上梓する決心をしたのです。余談になりますが、NPO法人栃木県日韓女性親善協会の会長として、俳句と同時進行で今日まで近くて近い国韓国の女性の皆さんと互いに両国の歴史や文化、教育等の面で交流を深めて来ました。これからも女性の力で民間外交として更なる親善の絆を深めて参りたいと思っています。……』と、ある。

「白魚火」副主宰という重責を負いながら、且つ年に2度は韓国を訪問し、日韓親善の役目を果たし、時には日韓の通訳まで果すという活動家である。句にもさりげなくその状況が詠われている。

句集は、涼新た(H18~19)、神橋(H20~21)、橡茂る(H22~23)、チマチョゴリ(H24~25)の各章から成っている。



日常のありふれた景の中に常に新鮮な視点や発見がある

 春雷や鞄の底で鳴る電話

 沙羅の花寺に名入りの竹箒

 落ち鮎の泳ぐ姿に串打たる

 石畳継ぎ目つぎ目の草もみぢ

 座る位置変へて扇子の風貰ふ

 窓際に移して咲かす冬薔薇

 ホテルにも有る坪庭や芽水仙

 城垣をあみだ走りに青蜥蝪

判読の出来ぬ表札凌霄花 

 天気晴朗なれども梅を散らす風

 ポストまで歩いて二分梅雨晴れ間

 色変へぬ松や味噌屋の門構へ

 辻褄の合はぬ会話や秋暑し

 酔芙蓉明日咲く蕾数へをり

一読判り易いのに深みを感じる

 防火用桶にも家紋水温む

 宍道湖を狭むる程に蜆舟

 束のまま根付いてをりし余り苗

 涼新た塔に重ねし塔の影

 午後五時で点く門灯や虫すだく

 天気図は西高東低梅固し

 五稜郭五稜をめぐる水の秋

 霜柱踏んで朝刊取りに出る

 二代目の女将は二十歳蕗のたう

非凡な表現力と感性によって平凡な景が息づいてくる

 水底に戻る明るさ萩の花

 麦秋や杭一本の県境

 酒蔵の開かずの窓や日脚伸ぶ

 いつときといふ刻のあり虫しぐれ

 雲切れてより山紅葉谿紅葉

 水の輪に水輪重ねて水馬

日韓女性親善の桟として

 ニイハオの国の消印寒見舞

 片脚は韓半島に秋の虹

 温突に座せば会話の弾みけり

 初蝶を見しと韓国よりメール

心の揺らぎ

 何も彼も忘れたき夜の遠蛙

 ものの芽の疼き出したる雨の午後

 この峠越ゆれば他郷曼珠沙華

 冬蝶のかすかに動く気配して

 寝羅漢に春雪容赦なく積る

 散るさくらこれからといふ山桜

遠霞知覧に少年兵の遺書

 花は葉に知覧に朽つる特攻機

 茂りにも濃淡のあり橡並木

 歳月や今も母校に冬ざくら

 散り際の桜もつともさくら色

 三月の風あたたかき桜島

身だしなみの一端

 流行の色は桃色春ショール

 身だしなみほどの香水耳朶に

 探梅や口紅の色変へもして

俳句と日韓女性親善の二兎を追って二兎を得た女史の面目躍如たるものがある。

勇気と仄々とした読後感を頂いた。

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