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2013年2月16日 (土)

白寿翁の句集「白寿」

俳誌「馬醉木(あしび)」、「海坂(うなさか)」の各当月集同人である野原春醪氏より、同氏の第7句集「白寿」を頂いた。
著者の野原氏は大正3年(1914)2月生れであるから文字通り白寿である。句集一冊を出すだけでも大変なのに、白寿翁で且つ第7句集とは文字通り超立派である。
Photo馬醉木名誉主宰である水原春郎氏が、帯文に次のように述べている。
大戦を生きて白寿の雑煮かな
春醪さんの生涯を見事に語る句だ。産土を愛し、家族を大切に又友を育み、羽公・瓜人に学んだ俳句を今尚大事に守っている姿を私は敬愛している。白寿おめでとう。』と述べているが、野原氏の総てを語っていると思う。

句集は季節別に並べ、時候・天文・地理・生活・行事・動物・植物の季語別に整理されている。

帯文にもあるように、現在までの自分史を含めて、
   大戦を生きて白寿の雑煮かな
   この雛と生き百年の天寿得し
   晩学にいそしむ障子貼りにけり
ご家族を大切に
   亡き母の編みし腹巻暖かし
   七種や妻の遺愛の籠に摘む
   五人の子みな古希をこゆ福寿草
ご出身の伊吹をはじめ各地名を織り込んだ句が多いのは郷土愛の強い証とお見受けする。
   伊吹嶺の日の膨れ来る初音かな
   秋深し信濃の宿のさくら肉
   宇津ノ谷の風やはらかき冬至梅
自然と真摯に向き合って
   老松に千の芯立つ浮御堂 
   田を植ゑて軒の内まで水明り
   明滅の滅の長さよ秋蛍
各地への吟行句も多く
   春深し奥に灯のある京格子
   日表も日裏も霜の奥伊吹
   明易し枕の下の関ヶ原   

志茂田景樹氏(作家)は、PHP3月号に『生き方を年齢というものさしだけで決めるのはよくありません。「人生いつも今が出発点」』と述べている。又サミュエル・ウルマンの『「青春」という詩』を思い出すが、言うは易く行なうは難しの面もある。文字通り実施している野原氏の生き方に感銘する。

一口に白寿と言っても、この御歳で、このご活躍は特筆に値する。勿論ご家族をはじめ陰で支えてくれる方々がいらっしゃることでしょうが、それにしてもご立派の一語に尽きる。

後に続く者達へ勇気を与え、仄々とした読後感を与えてくれる句集である。

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2013年2月 1日 (金)

青春時代の軌跡

このところ随分本を処分した。しかし処分しきれない本も多数ある。

処分しきれなかった本の中には、頁を折り曲げたり、傍線を引いたり、感想を書き込んだりした本があり、今読んでもあの時代にはこんなことに共鳴していたのか、こんなことに感動していたのかと、読み返して懐かしさを覚える本がある。青春時代の軌跡を省みる感がある。
同じ本は今だって本屋に頼めばいくらも手に入る本があるが、手垢のついたあの書き込んだり、折り曲げたりした本こそ欲しい本だ

そんな本の中に今も心に残りながら手許にない、青春時代の軌跡の一端を感じさせて呉れる本がある。
倉田百三著「愛と認識との出発」、原口統三著「二十歳のエチュード」の2冊。
何時、誰に貸したのか覚えがない。しかし返して頂いた記憶もないし、現に手元にもない。

その中の原口統三著二十歳のエチュード」は、岩波文庫で、本屋に頼んでも絶版になっていて手に入らない。図書館にもないという。手に入らないと思うと無性にもう一度読んでみたいと思った。あの当時の傍線も書き込みも無い本が手に入ったとしても、案外青春時代に感じたことと現在の感じとは違っているかもしれない。兎に角もう一度読んでみたいと思ったが諦めていた。

Wikipediaに拠ると、『原口統三の遺著となった「二十歳のエチュード」は、夭折した詩人の書として人気を集め、30年以上に亘って版を重ねた。文芸評論家で原口の後輩に当たる高橋英夫は「戦後詩は原口統三を発見するところから歩みをはじめた」と高く評価し、彼の自殺については唐木順三の自殺について」(1950年)でも扱われている。また生前親交のあった清岡卓行は「海の瞳」で原口を描いている。

一方で、評論家の中村光夫は「文学が人生におよぼす害悪の一例」として批判している。また原口の周辺にいた学生らを「自殺教唆者達」と非難する声もあったという。』とある。

ところが諦めていたその本が手に入った。勿論書き込みも傍線もないまっさらな本だ。アマゾンの小型タブの中の「本」の欄に載っている。しかも¥0で購入できる。
早速手に入れたが、昔の傍線や書き込みがないから、推測に過ぎないが矢張り昔読んだ時の感想とは大部違っているように思う。

Wikipediaの文中にある、唐木順三著「自殺について」は昭和25年(1950)頃発売された弘文堂刊の「アテネ文庫(絶版)」に収められている。
「きけわだつみのこえ」「藤村操」「芥川龍之介」等々12編の内の一編で、本書の前書きには安楽死論と自殺等に就いての考察が書かれている。

想いの籠もった本は安易に他人へ貸すのは考え物だ。自分が想っていることと他人の想うこととは必ずしも一致しないからだ。
年寄りの本への郷愁の一端である。

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