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2012年4月29日 (日)

医師の一言

医学の進歩に伴って、予知困難な病気も最近では比較的容易に予知されるようになり、治療方法も飛躍的に向上した。そのような背景もあって、最近は病名の告知が当たり前のようになった。

然し、吉行淳之介の例に見るように、患者によってはそれを望まない場合がある。
又、私の知人のKさんは、医師から「貴方の余命は、まるケ月です」と直接言われた後、急に体力が衰えて亡くなった。付き添っていた奥様は、今でもその時の医師のことを「本人に直接あんなことを言うとは思っていなかった」と、今でも悔しそうに言う。

いつも的確な分析と自己主張を書き送ってくれるAさんから便りがあった。
いつものように長い論説の最後に、自分の現在の健康上の問題に触れて、概要次のような意見が付加されていた。

『敗戦の3月10日、東京大空襲の際「避難せず自分の住んでいる家にどんどん水をかけて燃えないようにせよ、防火に努めよ」という命令に従い、みんな自分の家から逃げず焼け死んだ。

戦時中の大本営発表は嘘で固められた。嘘で固めるには真実を隠さなければならない。全滅しても”我が方の損害は軽微なり”と。

昔大本営、いま原子力保安院、時を越えて似たものを感じる。……

今の私は病んでいる、医師は「あなたの手術後の3年以上の余命は30%です」とか、よくもずけずけ人の気持も知らないで口にするものだと呆れている。ここでは「あなたの気力や精神力でもってすればまだまだ生きられるものと確信し、私もそのお手伝いをするのに吝かではない」くらいの嘘?をつくのも時には必要ではなかろうか、嘘も方便という言葉があるではないか。本論とは関係ないことだが。』と、あった。

医師は医術によって人を助けるのが職業だが、言葉によっても人を勇気付けたり、助けたりする者だと思う。
「総て告知するのが進歩的な医師だ」などと思うのは、余程の思い上がりか、思いやりのない医師だと思ってよい。
医師に限らず、根底に人間愛がなければ浅薄な人間か、冷酷非情な人間でしかない。
Aさんの手紙を読んで胸を打たれた。

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