« 「遠州のしなの」に想う | トップページ | 共産党最後の日 »

2012年3月 9日 (金)

うつしみは

俳人協会・俳句文学館発行、平成24年3月の俳句カレンダーに、西村和子氏の一句が載っている。

2403_21_2 うつしみは涙の器鳥帰る  西村 和子

帯屋 七緒氏の解説がある。

茫漠とひろがる春浅い景。作者は、ひとり佇つ。

 そのまなざしが大空の涯に向けられていると思わせるのは、季題「鳥帰る」の働きばかりではない。「うつし身」が、亡き人の存在を語るのである。
 あの人は、私をおいて逝ってしまった。この世に残されたわが身は、まるでとめどなく湧いてくる涙を湛える器。見上げる空を今、あの人の化身とも思える白鳥が北へ帰ってゆく。

帰る鳥は多いが、ここでは白鳥がふさわしい。大和言葉の「うつし身」が死後、白鳥となって天翔けたという倭建命のイメージを誘うからである。
 
喪失の悲しみに満ちた身を「涙の器」とした新しさと、上五中七を普遍的に述べて、かえって感情の深さを表現した技巧に注目したい。
 夫を亡くした平成18年の作。句集『鎮魂(たましづめ)』所収。(帶屋七緒)

|

« 「遠州のしなの」に想う | トップページ | 共産党最後の日 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/99342/54178610

この記事へのトラックバック一覧です: うつしみは:

« 「遠州のしなの」に想う | トップページ | 共産党最後の日 »