« みんみんが鳴いた | トップページ | 妖しき運命(さだめ) »

2011年9月12日 (月)

句集「熊の皮」

 俳誌・白魚火(しらをび)同人である栗田幸雄氏から、句集「熊の皮」を頂いた。

Photo 「あとがき」に、「思い返せば会社をリタイアする時期に妻の急逝で、欲張った夢や計画は打ち砕かれ、茫然自失の一人居へと一変し、自らの健康管理の必要に迫られました。

そのような中で俳句も、心の健康と自分史作りの一助として始めたものです。」とあり、以来「自分自身驚くほど俳句にのめりこんでゆき精神的にも立ち直りが早かったように思われます。」とある。

序文で白魚火の仁尾主宰が述べているように、「逆境や苦難を幾度も乗り越え都度、道を開いてきたパワー」を感じさせる句集である。旅吟の多いのもその一例であろう。

句集は、なまはげ(H1116)文化の日H1719)、熊の皮(H20)(はたはた)(H21)、種袋H22)の5360句から成っている。

句集名の「熊の皮」は

  横座にはまたぎの座る熊の皮
から取られたもので、東北山間地帯のまたぎの伝統を捉えたもの。

 

 親子の情愛をしみじみと詠んで

   嫁ぐ子とバージンロード夏ふかし  

  亡き妻の植ゑし四葩を截りにけり

  夏の桃供へて妻の忌を修す

  百合の花豪華に活けて一人の夜

  書を曝す中に戦時の銀行券

自然を深く見つめて

  暫くは夕日とどまる秋桜

  空をけり海女は波間に消えにけり

  鳥帰る潮目まぶしき岬かな

  揚雲雀空の深さをまだ知らず

  菜の花や消し忘れたる昼の月

  一湾の潮目さだかに望の月

  月の宴下戸の吟ずる黒田節

  きびきびと柏手を打つ寒詣

  曲屋の上がり框に踊り笠

  仮名書きの三嶋暦や初つばめ

  富岳より水を戴き代田掻く

  次々と峰雲育つ草千里

  秋澄むや檜の匂ふ輪つぱ飯

  霜晴や匠の打ちし備前物

地方吟も多く

  なまはげが御酒を過ごして転げけり

  湿原の風に色あり水芭蕉

  文化の日ランプの宿で早寝かな

  鰰(はたはた)の押し寄せて来る海の色

  国後を指呼に流氷ただよへり

  更けて尚おわら踊の辻流し

  カルデラに飛び火のごとく草紅葉

  横座にはまたぎの座る熊の皮

海外詠も多国に渉り

  夕立晴れ氷河の湖はエメラルド(カナダ)

  ランタンの淡き灯りや春の雨(中国)

  白秋のマッターホルン雲遊ぶ(スイス)

  菩提樹の花の街道馬車の鈴(ドイツ)

生活に密着した句も

  田起しの土の匂ひて春近し

  徒然に書く旅日記月朧

  寒析の遠退く音や地酒酌む

社会の動きも機敏に捉え

  黴の香や座して商ふ古本屋

  世話焼きの指図あれこれ川施餓鬼

人生や心象を詠って

  雑音の玉音遠き終戦日

  余生なほ為すこと数多大根蒔く

   年長けて日月早し麦の秋

   自分史に余生のことを秋夜長

   種袋振ればいのちの弾みけり

 挙げ出したらきりがない。白魚火のモットーは「わが俳句足もて作る犬ふぐり 西本一都」で、栗田氏の句集「熊の皮」の読後感はこのモットーを彷彿とさせる。仄々とした読後感を頂いた。

|

« みんみんが鳴いた | トップページ | 妖しき運命(さだめ) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/99342/52685666

この記事へのトラックバック一覧です: 句集「熊の皮」:

« みんみんが鳴いた | トップページ | 妖しき運命(さだめ) »