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2011年5月12日 (木)

危機にこそ詩歌

昨日は、東日本大震災発生後、満2ケ月が経った。この間、関連詩歌も多く発表されている。  

  禱(いの)るより為す術もなし梅匂ふ
これは東日本大震災の直後、遠く離れた浜松の俳人T氏が、恐らくTV等で知ったあの惨害を見ての感慨を詠ったものだろう。
  沖深く津波(ヨダ)の帰れる海の春
は、東京のK氏が同じく現地に想いを馳せて作ったに違いない。
  殉職者数知れぬまま新年度
は、八戸市のY氏の作。黒田杏子氏選の句。心が籠もる。
  

『 さくらさくらさくらさくら万の死者
は、大船渡市の桃心地氏の句。黒田杏子氏の選で日経俳壇に載ったもの。すさまじい廃墟が広がる三陸の被災地からの投句で、選者の黒田氏は「国民的鎮魂歌」と評している。

桜前線は津波にのまれた町にも達した。しかしそこには、おびただしい数の死がある……。深い悲しみを詠みながら、しんとした静けさを漂わせているのは言葉の力ゆえだろう。……
もともと、社会的な出来事にもなじみやすいのが日本の短詩型だ。大きな災害はしばしば句や歌に詠まれるが、こんどの事態は詠み手の精神をしたたかに揺さぶっていよう。切り立った言葉。魂のこもった表現。現実の重みが秀作を生む。戦争や動乱と同じように、震災はやがて、文学を突き動かしていくだろう。
   まがまがしい金の満月のぼりきて地球の裏の故国思へり
こちらは日経歌壇に載ったメキシコ市に住む神尾朱美さんの歌だ。異郷の輝ける満月に、かえって深まる日本への思い。居ても立ってもいられぬ気持ちが作品になったのかもしれない。災厄の前で人は言葉を失う。それでも、言葉にはなお力がある。』は、日経・春秋氏の弁。

被災者への励ましの句も多々。俳誌「俳句」より任意抜粋。
  祈りとは心のことば花の下           稲畑汀子
  さくら咲け瓦礫の底の死者のため      矢島渚男
  みちのくの花のさかりを思ふべし       橋本榮治
  負けるまじ大地の芽吹きうたがはず     谷中隆子
  みちのくの同胞(はらから)にこそ花盈ちよ  奥坂まや
  北めざす燕に祈り託したし           片山由美子
  芦芽(あしかび)のごとくふたたび国興れ   長谷川櫂
『この悲惨な現実を俳句で受け止めることが出来るのか。もしあなたが無力感に負けてそれをやめるなら、それは俳句が無力なのではなく、あなたの俳句が無力であるということです。大震災は俳人一人一人の試練でもある。』(櫂)

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