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2010年7月 2日 (金)

第44回蛇笏賞

第44回蛇笏賞の受賞者が発表された。受賞者は真鍋呉夫くれお)氏。受賞対象は、句集「月魄(つきしろ)」。

蛇笏賞は俳句界に於ける最高の賞と言われ、最近の受賞者は著名俳人が多かった。
今年の受賞者は、戦中派として、青春を国家と運命を共にしてきた感のある同氏。句にも切々とその想いが詠われていて、特に我々世代にとっては共感を呼ぶ。

俳誌「俳句」の6月号に受賞の発表があり、7月号にその関連記事が掲載されている。主として同誌からその内容を探る。

真鍋呉夫氏の略歴。大正9年(1920)福岡県生まれ。
昭和14年(1939)、矢山哲治・阿川弘之・那1 珂太郎・島尾敏雄等と同人誌「こをろ」を創刊。同16年(1941)、文化学院に入学、佐藤春夫の声咳に接し、遺書のつもりで句集「花火」を刊行。同17年(1942)、応召。佐賀の関沖の無人島に駐屯。戦艦大和の出撃を見送る。同20年(1945)、復員。
同24年(1949)、上京。文筆活動に入る。
平成4年(1992)、句集「雪女」により、第30回藤村記念歴程賞および第44回読売文学賞を受賞。同14年(2002)、「真鍋呉夫句集」を刊行。同22年(2010)、句集「月魄(つきしろ)」により第44回蛇笏賞を受賞、現在に至る。

受賞の言葉から一部を引用する。
「…谷川雁は世界の現在の惨状に対抗して『連帯すれば、孤立しても仕方がない』と言って死んだが、私は『常人の一人一人が「さびしさをあるじ」としなければ真の連帯は生まれない』と考えている。又、アイデンティティは『自己同一性』と訳すだけではなく、『相補的同一性』と訳すべきだと中村雄二郎は言う。即ち、私が『俳句は反戦でも非戦でもなく、不戦なのである』と信じる所以である」と述べている。

句集「月魄」より、適当に抜粋する。
          露草
   初夢は死ぬなと泣きしところまで
   船蟲の水より淡き影を曳き
   死者あまた卯波より現れ上陸す
   残されし日をかく生きむ寒昴
          釘隠
   約束の蛍になって来たと言ふ
   骨箱に詰めこまれゐし怒涛かな
   襤褸市の隅で月光賣ってをり
          白桃
   我はなほ屍衛兵望の夜も
   寒月光澄むといへども檻の中
      鐵帽に軍靴をはけりどの骨も
      (ノモンハン事件より60年後の遺骨収集)
          青鷺
   月光の沁みしが燻る焚火かな
   姿見にはいってゆきし螢かな
   蚤しらみ生者に移る月夜かな
          湧水
   去年今年海底の兵光りだす

他に、
   青き夜の猫がころがす蝸牛
   轟沈のあとはことなき月夜かな
   月魄や出入りはげしきけものみち
何れも戦中派の哀歓をひしひしと感じさせる俳句である。

間もなく八月が来る。
   八月は六日九日十五日  作者不詳

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