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2010年2月22日 (月)

宝物

些細なものでも想いの籠もったものは、その人にとっては宝物である。
私の机の引き出しの中に、使い古して今は使わなくなった、一本の万年筆がある。昔のパイロット万年筆で、父が松花堂という文具屋で買い求めたもの。
Photo
私が中学(旧制)に入学したときに買ってくれたものだ。
私の育った時代は、一村から中学に行ける者はせいぜい2、3人くらいで、相応の才と財に恵まれた人に限られていた。そんな中で、恩師の薦めもあって、父や母が私を中学に入れてくれたのは余程の決断をしたのに違いない。

万年筆には私の名前が彫りこまれている。
この万年筆は社会人になっても大切に使った。使い古して彫りこんだ名前も掠れて今は消えかかっている。本体とキャップを結ぶ螺子山も磨り減って効かなくなっている。

そんな万年筆だが私にとっては大事な宝物だ。当時の値段でいくら位したか定かではないが、乏しい暮らしの中で父が買ってくれた万年筆。
この万年筆を見るたびに「誠実であれ」「謙虚であれ」「感謝の心を忘れるな」と常に語りかけてくるような気がする。自分一人で大きくなったわけではない。或る俳人は詠う。
    忘恩の徒とはなるまじ年新た    扶人
一本の万年筆。今の豊富な時代から見たら取るに足らないものだろうし、些細なものだろうが、親の愛情の籠もったこの万年筆は私の宝物だ。

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コメント

この万年筆には、Alpsさんのご両親の決断が込められていて、そのご決断のお陰で、Alpsさんの立派な社会貢献が生まれた。 それを思うと、これはAlpsさん個人の宝物ではなく、社会の記念碑の一つである、と思う。
昨秋に公園の路上に散る紅葉の葉の一枚一枚がきれいに姿形が整っているのを見て感銘を受け、このささやかな存在の一つ一つが全宇宙を形成しているのだと感動したことを思い出した。

投稿: 二人のピアニスト | 2010年2月23日 (火) 05時18分

コメント有難う御座います。
「子供の宝物」と良く言われますが、大人にも色々の想いの籠もっているものがあり、それが「大人の宝物」だと思っています。
「詩の神は細部に宿る」「心は物を通さなければ伝えられない」などと俳句の世界では表現され、事実そのように焦点を決めて詠いこまれていますが、矢張り想いの籠もった物があると、そこから次々と色々のことが思い出される。
ピアニストさんに此処から発したと言われると尚更いとおしい宝物のように思えてきます。

投稿: Alps | 2010年2月23日 (火) 08時02分

コメント有難う御座います。
「子供の宝物」と良く言われますが、大人にも色々の想いの籠もっているものがあり、それが「大人の宝物」だと思っています。
「詩の神は細部に宿る」「心は物を通さなければ伝えられない」などと俳句の世界では表現され、事実そのように焦点を決めて詠いこまれていますが、矢張り想いの籠もった物があると、そこから次々と色々のことが思い出される。
ピアニストさんに此処から発したと言われると尚更いとおしい宝物のように思えてきます。

投稿: Alps | 2010年2月23日 (火) 08時03分

幾山河を検索している中で、ここにたどりつき、色々と読ませて頂きました。とても胸に響くものばかりでした。どういう方なんだろうと思いましたが、このブログにしか辿り着けないようでしたので、コメントさせて頂く事にしました。これからも読ませて頂きたいなと思っています。私もこの今の世に対して、日本に対して、日本人に対して、そしてマスコミに対して、政治に対して、若輩ながら思い危機感を感じる事が沢山あります。ですが、うまく言葉にすることも、文字にすることも、誰かと語り合う事も出来ず、つまりは頭の中、心の中で悶々としているだけで、何も出来ていないという状態です。ただ読ませて頂くだけでも、心が落ち着くという事もあるのですね。

投稿: yoko | 2010年3月 5日 (金) 01時16分

yokoさま 
お読み頂いて有難う御座います。
4日から旬日、老骨に鞭打って所用の為に、バルセロナ(スペイン)へ行って来ました。日本の外から日本を見ると、いつも感じるのですが、新たな視点が生まれますね。
夫々の国の歴史・宗教・思想・地理的条件等を含めた国情もあって、一概には論ぜられないにしても、便利さの為に自然や建造物をいとも簡単に犠牲にする日本と、ヨーロッパ各国のそれとの差を改めて実感しました。

投稿: Alps | 2010年3月15日 (月) 21時34分

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