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2008年10月12日 (日)

薪能

10月9日、浜松の文化芸術大学の屋上芝生の特別ステージで薪能松風」が開催された。これは同大特別公開講座として開催されたもので、これに先立ち7日は朗読劇「松風」が、8日は「舞台裏から見る景色」に就いての講座があった。

松風」は、世阿弥初期の幽玄能で、「熊野、松風に米の飯」と評され完成度の高い演目という。
あらすじは、『旅の僧が須磨の浦を訪れ、磯辺の一本の松に目を留めた。この松の謂れを所の者に尋ねると、それは嘗て在原行平が愛した、松風・村雨という二人の海人乙女の墓であるという。
日が暮れて僧は近くの汐屋で一夜を明かそうとする。すると二人の海人が現れる。それこそが松風・村雨の亡霊であった。二人は汐を汲み、歌を歌いながら、月は一つなのに、二つある桶の水面には月の影がそれぞれ映ると興ずる。
僧は二人に在原行平の和歌に就いて語った。行平が松風と村雨のために旧跡を弔ったのだと聞かせる。
姉の松風は行平のことを思いながら、涙ながらに行平の形見の衣装を取り出しそれを纏うと、松が行平に見えてくる。村雨は姉を止めるが、松風は行平の別れ際に残した歌を歌い舞う。
 「立ち別れ いなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば今帰りこん」
だんだんと夜が明け、僧が目を覚ますと、そこには松風ばかりが吹き残っていた。』

シテは梅若猶彦、ツレは梅若善久、ワキは福王茂十郎ほか等で、薪能など始めての者にとっても何か胸に迫るものを感じさせる。
Img_5086_7 当日のステージは二階屋上に設けられ、客席はそれを囲んでびっしりと椅子が並べられ、折しも快晴だった空からは涼風が心地よかった。空には小さな月が掛っていた。
  芝生席の最後尾に居た私の席からはステージが遠かったので実演写真は静岡新聞より引用した。
0810091_9

薪能(たきぎのう)は、主として夏場の夜間、能楽堂、もしくは野外に臨時に設置された能舞台の周囲にかがり火を焚いて、その中で特に選ばれた演目を演じる能。「薪の宴の能」の意。起源は平安時代中期にまで遡り、奈良の興福寺で催されたものが最初だという。興福寺では、現在5月の11日、12日に薪能が行われている。ただし興福寺では薪御能(たきぎおのう)と呼ぶ。また、薪御能の源流はあくまで神事・仏事の神聖な儀式であり、野外で薪を燃やせば薪能になるのではないとしている。

現在、各地の神社仏閣(平安神宮、増上寺、生国魂神社など)や庭園(大阪城西の丸庭園、新宿御苑など)で催されている。

京都郊外の薪村(たきぎむら)で行われたので薪能と呼ばれた。』(Wikipedia)

同大の薪能の特別公開講座は今回で8回目(8年目)を迎える。第1回目の講座の開講時、時の学長だった木村尚三郎氏は次のように語っていた。
『お能はその夜の世界を拓いて見せてくれます。そこには人間中心の欧米的ないし近代的な、初めや終わりはなく、過去と現在の唆別も、演者と観客の別もありません。その代り、笛や鼓を通して風の音や山の木霊(こだま)が聞こえてきます。謡や舞を通して、人の心の奥底が見えてきます。能では面(おもて)をつけていない素顔を、直面(ひためん)といいます。それは私たちが「素顔」という面をつけて、心の底を見せないように日常を演じているということです。』

江戸時代、薪能は徳川幕府の手厚い保護を受け、繁栄していた。しかし、明治維新によって、新政府が成立されると徐々に衰退の道をたどることになった。

現在、全国各地で行なわれ、多くの方々に親しまれている野外能としての薪能は、第二次世界大戦後に広まったもので、比較的新しいものである。

火と空気が織り成す舞台で能を舞う。それら三者が一体となった心地よい調和を生む。
     序の舞を火蛾仕る薪能    高橋たか子
    急調に入りし羽衣薪能    伊藤 徹
    今し舞ふ薪御能は田村らし  伊藤 徹      

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