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2008年10月 7日 (火)

晩年といへば

晩年といへばむらさき湿地(しめじ)など

俳人協会・俳句文学館発行、平成20年10月俳句カレンダー所載句である。作者は三田きえ子氏鈴木紀枝氏の解説がある。

 『晩秋の雑木林は、その澄んだ空気と光に身を委ね、心を自在に遊ばすことのできる稀な空間のひとつである。
 豊かな時間に浸っている中で、作者はムラサキシメジに出会った。湿った地に紫色のかさが列をなし輪を描いて群生する。この光景に遭遇しえたならば、それは眼福の一語に尽きる。
 木々の葉が燃えるように染まるその下で、ひっそりとしっとりと営まれる生。しばし濁りのない匂うような色を地にふりまいて。
 さて目の前の世界の広がりよりも、後ろに置いてきた世界の深さに心を奪われる時、人は晩年の意識にとらわれ始めるようである。
 だが作者は「晩年といへば」と何気なく主題を提示し、あの山中での「むらさき湿地」との一会の残像を蘇らせるのである。 しかも「など」と軽く納めて、絞ることも断定もせず、詠嘆もしない。主題は淡々と柔軟に展望される。
 晩年のありようを、このように華やぎをもってゆったりと詠んだ句をほかに知らない。平成14年作。(鈴木紀枝)』

この時期に晩年と詠うのは、多少抵抗もあるが、全体的には紀枝氏の解説に共鳴する。

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コメント

この句を、そして、この解説を読んだときに真っ先に私の脳裏を横切ったものは、9月29日のエントリーにコメントを入れたときに私の心底にあった川上源一氏ことだった。
川上氏は現業時代に、そして川上氏でなく、似た生きざまを過ごした、例えば、ホンダ氏にしても、ソニー井深氏にしても、現役時代は本当に世間の注目を集める大活躍をされたわけだが、「晩年といえば」の主題で私が思いをめぐらせると、そこに頭が行ってしまう。

投稿: 変人キャズ | 2008年10月 8日 (水) 05時04分

「あの人の晩年は」などとよく言われ、過去の生き方と共に、晩年を飾るに相応しい生き方をした人たちは清々しさも残す。
仕事一筋に進んでいる時に優れた業績を残した人の、晩年になってからの言動が汚点を残す事も世間にはよくあることで、多くのマスコミの好餌となって、そのために晩年のイメージが過去の業績を覆ってしまう例も多い。
先人に学ぶべきは優れた業績を如何に成し遂げたかに学ぶと共に、晩年の生き方も学ぶべきものが多いと思う。
掲句の「晩年といへば」の解説を読んでしみじみ、晩年の生き方の大切さを感じる。

投稿: Alps | 2008年10月 9日 (木) 09時32分

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