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2008年8月 5日 (火)

句集「戸隠第三」

今井恭介(俳号:恭)氏より句集「戸隠第三」を頂いた。

著者は「後記」に概要次のように述べている。
『若い頃は、古稀とか喜寿の年齢は、はるか遠い遠い彼方の様に思って居りましたが、いつの間にか其の年齢に達して終いました。このたび喜寿を記念して句集「戸隠第三」を作りました。……昭和54年に第一句集を平成15年に第二句集を作り、今回は平成元年から平成17年のものを纏めて第三句集「戸隠第三」と致しました。……私達日本人は、地球の上で自信を持って祖先の歩んできた道を、しっかりと後世に伝えなければならないと思います。云々』と、想いの一端を述べて居る。
Photo_3

著者は、人生の大半を信州の戸隠村(現、長野市戸隠)の村医として地域に貢献してきた。

戸隠と言えば私の故郷の直ぐ近くで過去何十回となく訪れた所でもあるので懐かしい。従って著者の土地に密着した俳句は一々胸に響く。句集も今回で第三句集となる。

本句集を拝見して、
 地域に密着し地域をこよなく愛し、
 本業である医に徹し村医として貢献され、
 ご家族とそのところを得た生き方、
 
戦中派の世界観を垣間見、
 
華麗な人脈に想いを馳せ、等々
まさしく著者の自分史であり、一句一句に夫々の想いが籠められている。
読後、記憶に残る主な句を本書の春夏秋冬の順に記す。

戸隠という地域に密着して、

  戸隠や緑の中に神在す

  戸隠の山屹立す蕎麦の花

  飯綱に笠岳の影秋深し

  飯綱の高みに秋の茜雲

  戸隠や野を焼く煙二つ三つ

  大氷柱地に届かむと崩れたり

  戸隠ゆ横手白根の空遥か

  これはまあ彼岸過ぎても雪二尺

次第に過疎化してゆく村にあって、生業・本業の「村医」に徹し、

  過疎の村柿のみたわわ夕暮るる

  種蒔の話などして村の醫者

  春深し農の醫として五十年

  収穫の話などして村の醫者

  秋日和こころをも診む老醫かな

  聴診器掌に暖めて寒に入る

 特に恩師の主治医としてその最後を看取った時の句は胸に迫る。

    わが涙滂沱と落つる梅雨深し

戦中派の性は拭えず、開戦日の感慨そして又夏ともなれば、沖縄戦や原爆忌そして敗戦日が思い出され、

  敗戦の日の暑かりし若かりし

  沖縄の戦ひ果つる大暑の日

  何はとも不戦の誓ひ敗戦日

  原爆忌八月六日八時十五分

ご家族のことはまさしく家族記録の感あり、仄々としたものを感じさせてくれる、

  三十三回子の忌を修すあの花と

  みちのくに歯學を學び卒業す

  亡き親も子もわが傍に春彼岸

  縁結ぶ明治神宮秋日和

  深雪晴合格の子は聲押へ

俳句を始めて50年のキャリアーは、身ほとりや自然観察の情感も深く、

  春風や道邊に馬頭観世音

  デパートの片隅で待つ日永かな

  蕗の薹ほろほろ苦き喜壽の酒

  秋芳洞太古の風に吹かれをり

  一斉に蝉啼き森が大きくなり

  靜岡の御茶で大暑払ふかな

  巴里祭革命もパリも知らず過ぎ

  霧深し山の果てまで木曾檜

秋ともなれば物想うとき、

  枯野道さき見えずとも行く外なし

  尾花揺るる日本の言葉美はしき

  敬老日いまだ敬して敬されず

  命とは心身一如秋深し

  大雪に籠りて思ふこと多し

華麗なる人脈は著者のご職業との関係やお人柄によるものか、

  父君の醫を継ぎ峡に幾春秋

  先達の叙勲壽ほぐ文化の日

  名工の白壽を祝ふ秋高し

  百歳の天壽を祝ふ秋日和

  越後より鮭賜りて年重ね

等々、人との出会いを大切にされてきた結果と見るべきか。

 そして戦中派の現在の世相に対する感慨も含めて、

  羅も着けずに今の若者は

  七夕や老いても願ふこと多し

爽やかな読後感を頂いた。有難う御座いました。

著者の生き方をモデルに一句。
  合歓の花村醫となりて老いゆくか

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