佐鳴湖
浜松市の西南方に佐鳴湖(さなるこ)がある。
東西600m、南北2.2Km、周囲7Km、面積119ha、水深2m。
三方原台地の水を集め浜名湖に注ぐ谷川が沖積期(約1万年前)に、南端に打ち寄せた砂州によって出口が塞がれて出来た自然湖で、現在は浜名湖と佐鳴川(入野川)で結ばれている。佐鳴湖周辺は風景明媚なので多くの郷土史家、歌人、俳人、画家等が訪れ、賀茂真淵や杉浦国頭等の短歌もある。
小夜更けて松風高き山寺の
月はうき代の塵も曇らず 真淵
入江吹くあき風はやみ浪かけて
萩のはさわし音そ身にしむ 国頭
江戸時代末期、入野の文学者・竹村広蔭(ひろかげ)は、その風景に感動し、近江八景にちなんで佐鳴八景と言って愛でた。佐鳴湖の、
西側:太田の落雁、大山の夜雨、少林山の秋月
東側:大良の暮雪、三ツ山の晴嵐、西湖山の晩鐘
出口:北浦の帰帆、大屋橋の夕照
の八景で、時代と共に周辺の風景も変ったが、当時の竹村の短歌には往時の景が蘇る。(後に昭和時代の歌人・高峰 博も八景を詠んでいるが今回は略。)
太田落雁 かき連ね落ちくる雁の玉づさの
数も太田のよいのあけぼの
大山夜雨 夜の雨の晴れゆくままに吹く風の
音にぞひびく大山の松
少林山秋月 影高くうき世はなれて照らすかな
少林山の秋の夜の月
大良暮雪 払ひあへず重げに見えて見る人は
大良の山の雪の夕暮
三ツ山晴嵐 山姫の晒せる布と三ツ山の
あらしに寄する磯の白波
西湖山晩鐘 湖の山もほのかに見えねども
かすみわけ来る入あいの鐘
北浦帰帆 真帆ひきて舟を並べてきほふなる
北浦風の吹くにまかせて
大屋橋夕照 ひむがしの浜松の市過ぎ来たる
夕日にわたるをちこちの人
歌詞は、佐鳴湖の東側台地上の老舗「佐鳴湖ホテル鳥善」の伊達善一郎氏の「佐鳴湖八景(昭和57年10月刊)」から主として引用した。
岸には一部に葦がびっしりと生え、湖を取り囲む台地にかけて坂がかる周囲は鬱蒼と木々が茂り、法師蝉が鳴き、遊歩道に遊んでいる鳥は人が近づいても殆ど逃げない。散策の人も釣をする人も、漕艇の学生もいて、近辺市民憩いの公園になっている。
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