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2008年6月 6日 (金)

わが青春に悔あり

青春時代に見た映画には自分の青春も詰まっている。
そんな映画を見ていると、当時の社会や思想の変遷が幻のように立ち上がってくる。そしてそんな時代の中に生きてきた自分自身の生き方も蘇ってくる。
青春時代の映画と言えば、「わが青春に悔なし」がある。過日NHK BSで放映されたが、私は迂闊にもそれを知らなかった。しかしそのことを知った旧友からこの映画を録画したDVDを態々送って頂いた(それには他にも数点、興味ある作品が載せられている)。

「わが青春に悔なし」の映画は、ご存知の方も多いと思うが、黒沢明監督、原節子主演に依る、京大事件を中心とする思想問題にテーマを得た物語であり、「満州事変をキッカケに軍部・財閥・官僚は……野望を強行するために、反対する思想の弾圧を強めた…」という書き出しから始まる。

八木原教授(大河内伝次郎)の追放、その令嬢で、無謀な戦争に反対する学生・野毛(藤田進)を慕う八木原幸枝(原節子)の戦中戦後を通した生き方をリアルに描き出し、逆境の中にあって自分の信念を貫き通し、耐え抜いた幸枝の生き方には泪を誘い感動を催す。「10年経ったらどっちの道が正しかったか判る」と、野毛は幸枝に言う。自由の裏には苦しい犠牲と責任がある。深窓の令嬢が獄中生活を送り、慣れない農耕生活に耐え抜いてゆく姿は悲壮感さえある。そして終戦、犠牲の上に成り立った今までの苦労が報われる。その生き方はまさしく、わが青春に悔なし。(映画の中の野毛は獄中死ということになっているが史実の詳細は知らない)。
たとえこれが映画の中の物語であったにしても、このような生き方をして来た人は現実の世界にも多数いることを疑わない。

特に原節子の知的美貌・美しい言葉・慎ましやかな所作等には、昔も今も理想の女性像を見る想いがある。そのような意味で、彼女のような女優が近来見られなくなったと思うのは間違いだろうか。

余談だが、この映画の出だしに、旧三高寮歌「紅萌ゆる岡の花 早緑匂う岸の色 都の花にうそぶけば 月こそかかれ吉田山」が歌われ、そのメロディーが映画のBGMとなっている。私はこの歌には、ある特別な私的感情があり聞くたびに胸が締め付けられる想いがある。この映画を見ている内はこの感情がそこはかとなく纏わりついて離れない(写真は銀閣寺と吉田山)。
Photo
私も戦中派、二拍子の青春時代を送った。幸いに優れた恩師に恵まれて今日が在る。しかし今、君の青春時代に悔はなかったかと問われたら矢張り、「わが青春に悔あり」と言わざるを得ない。

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コメント

ご近所の数家族と一緒に、また塩原温泉に遊びに行って帰ってきたら、TBを8回も送って頂いており、ご迷惑を掛けて失礼しました。
実は、その前からホームページを立ち上げるのに大変に難航し、苦労しており、ブログはサボっていたのだが、拝見するとAlpsさんは連日のご活躍で恐れ入りました。
ホームページは未完成どころか、まだ幼児にも成っていないのだが、気長にご覧になっていてください。 3年位したら、形が出来るかもしれない。 でも塩原に一緒に行った仲間も皆、同年代だが足腰に問題が生じてきて、この先、どうなるか心許ないのを見ても、果たして完成できるかどうかは分からない。

投稿: 変人キャズ | 2008年6月 7日 (土) 15時27分

過日お送り下さったものを楽しませて頂きました。TBを誤って2回もつけてしまってご迷惑をお掛けしました。
HPは楽しみにしています。
ご近所の方との触れあい旅行は良いですね。最近はこのような雰囲気が失われつつあるのが心配です。
5月にお寺さんの参拝ツァーで久しぶりに高野山へ行き、途中の通過点で石舞台へ寄ってきましたが一寸観光化し過ぎてしまった感がありました。

投稿: Alps | 2008年6月 7日 (土) 20時22分

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黒澤明監督の名作、「わが青春に悔なし」、 は1946年の作品で、原節子(当時26)の名演と共に、当時の世間の話題を攫った映画である。 映画は、戦前の京大事件から終戦に至る時期の世相の中で、京大事件の主役である教授の令嬢が純愛に生きる、ひたむきな人生の素晴らしさ、を描いたものである。... [続きを読む]

受信: 2008年6月 7日 (土) 14時58分

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