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2008年6月 1日 (日)

句集「たびごころ」

馬酔木同人の、一(いち)民江さんから句集「たびごころ」を頂いた。

民江さんが「あとがき」に記しているように「歳時記に載る行事をよく訪ね、日本の伝統を守り抜く方達の真摯な態度にいつしか心打たれる」ようになり従って各地での旅吟、写生句が多く、更に親子兄姉等の生き方に就いて世の中の不条理をヒューマンな視点から捉えた人生観は心に沁みる。
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句集は、野生馬・化粧塩・ざしきわらし・雪ゑくぼ・春疾風・狐火・流し雛・白絣・福寿草の9章からなり、計379句が納められている

全体を通してまさしく旅心である、
  野生馬の肌あらあらと草青む
  取分の章魚手掴みに帰りけり
  錆鮎の隙なきまでに化粧塩
  奈良坂に歩をとどむれば秋逝きぬ
  田遊の籾きらきらと撒かれけり
  田遊の田打男がとちりけり
  大宇陀の雪より白き葛晒す
  中千本その中ほどの花吹雪
  春の鴨吹きだまりゐて相寄らず
  夢に降りうつつに積り春の雪
  主綱の僧衣地を擦る除夜の鐘
  よく動く兜虫より買はれけり
  大根蒔く小袋さらに小分けして
  山里の沈む臘梅月夜かな
併せて行事や歴史・民話等を詠ったものが前半に多く、
  田楽を守り継ぐ七戸注連飾る
  四つ舞の一人幼し花祭
  前触れもなく粥占の始まれり
  ひよんどり漆黒の山迫りけり
  姥捨のまことを聞きし夏炉かな
  昼寝覚ざしきわらしが擦り抜けて
家族関係を詠ったものが多く、長兄・次兄を戦争で失った傷は今も戦後を引きずっている、
  みんなみに長兄死にき鷹渡る
  喰積や卒寿の母に婪尾(らんび)の酒
  父の日や遺影の父の膝知らず
  待つことの明け暮れ母は着ぶくれて
  息災の母にあやかる柚子湯かな
  花一分二分五分母を看取りをり
  春疾風急かさるるごと夫逝きぬ
  かげろふの後姿となりにけり
  とめどなく風とめどなく竹落葉
  共に踏む落葉の音もなかりけり
  亡き夫の靴を磨きて年惜しむ
  送り火の独りとなつてしまひけり
  こんなにも小さき妣のちやんちやんこ
人生の生き方師との関わりを詠って、
  半生をしたたかに生きちやんちやんこ
  今一度お声聞きたし火恋し
  来し方の顔捨てきれず日向ぼこ
  冬萌や晩年もまた捨て難く
  亀鳴くや何かと人に後れをり
  手探りの余生楽しむ柚子湯かな
  神留守の底を突きたる常備薬
  生き方を問はれてをりぬ蟇
  春愁や本に右綴ぢ左綴ぢ
  恙なく歩くしあはせ花樗
  語部に闇深みゆく夏炉かな

挙げだしたら切がなくなる。第一句集「たびごころ」には、民江さんの人生と生活実感が滲み出ている。爽やかな読後感を頂いた。

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