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2008年1月22日 (火)

商品コンセプト

ヤマハ発動機の本社コミュニケーションプラザに於いて、昨年の東京モーターショーに出品した同社ブースを再現し公開している。

同社がオートバイ業界に打って出た1955年代は、T社が断トツのトップ企業で、その後を、HSK各社が追い、更にR社等有望企業が続いていた。

ヤマハ発動機は、元々Y社を母体として誕生した会社である。Y社がオートバイ業界に参入した動機は色々あるが、いずれにしてもその決断をしたのはK社長(当時)であり、Y社の大方の経営者が反対する中での決断だった。
かくして生れたY社の新規事業部門は、やがて分離独立して現在のヤマハ発動機となった。今や1兆円企業に成長し、この業界のトップ3にまでなっている。経営者の孤独な決断を知る一例として知られている。

今回公開された同社のブースを見るお目当ての一つは、同社がオートバイ業界に名乗りを上げた時の製品第1号機であるYAⅠである。(写真はそのYAⅠ)。
Ya_3
YAⅠ生産移行時、生産技術の一端を担った私にとっては忘れ難い製品で、改めて吾子と対面した感もある。
因みにYAⅠの愛称は「赤トンボ}と呼ばれ、2サイクル125ccで、私も会社から供与された赤トンボを当時使用していた。
赤トンボが開発されて間もなく開催された、富士登山レースや浅間レース等で赤トンボは優勝を始め上位を独占し、その洗練されたデザインや性能と相俟って名機の名を欲しいままにした。
Ya_2
赤トンボが出てから間もなく業界地図はがらりと変る。圧倒的なシェアを誇っていたT社は見るみる内に勢いがなくなり、やがて姿を消していった。そしてR社も営業力が伴わず、あたら優れた技術を持ちながら脱落してしまった。

T社が脱落した理由の一つに挙げられるのは商品コンセプトである。

ヤマハ発動機の商品コンセプトは、若者をターゲットにした「スポーティーな乗り物」であるのに対して、T社のそれは「荷物運搬用の乗り物」であった。
従って前者はデザインと性能に重点を置いたのに対し、後者は荷台の大きさを大きくして何Kgの荷物を載せても安定した走行が可能かといったことに重点を置いた。
当然ながら、それはデザインや性能に現れる。因みにデザインの中には色彩も入る。ヤマハ発動機の製品がスマートな小豆色を主体としたのに対し、T社は黒色を主体にしていた。
それらの商品を選ぶ層と、その選択基準が結果として社運を左右することになる。

今頃「顧客指向の経営」などと言われるが、当たり前の事であり、ドラッカーも当時の著に「経営とは顧客の創造である」と言っているのは蓋し名言である。
現在、デザインは商品を決める重要な要素になっていることは周知の通りだが、その根本には商品コンセプトが関わっているのは論を俟たない。

浜松は、世界的なオートバイメーカーと、世界的な楽器メーカーが存在する町として良く知られているが今、生産拠点の浜松からオートバイが姿を消すことになるのは如何にも寂しい事である。

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