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2007年9月 5日 (水)

恋のころ

   恋のころ来し花野にて子を抱けり
   

俳人協会・俳句文学館発行、平成19年9月の俳句カレンダー所載の句である。作者は辻 美奈子氏で、仙田 洋子氏の解説文がある。

『辻美奈子さんの第一句集『魚になる夢』には、〈たやすくは二十歳の水着選ばれず〉〈愛されてゐて薄氷踏む遊び〉など若さや愛を詠った句があった。第二句集『真咲』には、〈春昼を泣く生みたての赤ん坊〉〈竹皮を脱ぐやこどもはいつも旬〉など母として真摯に命と向き合う日々が詠われている。そして、両句集の世界を繋ぐのが『真咲』に収められた掲出句である。
 結婚前にご主人と恋人同士として来た花野。母となり、幼い我が子を腕に抱きながら立つ花野。儚くも美しい二つの花野の景色が重なり、恋から結婚そして出産へと至る時間の流れが大らかに懐かしく描き出され、自分の命が新しい命へと受け継がれていく静かな喜びが感じられる。その上、〈恋〉と〈花野〉とが艶やかに響き合って、ご主人への想いの伝わる句でもある。
 『真咲』という句集名は、「真幸くあれ」との願いを込めて二人のお嬢さんの名前から一字ずつ取られたものだそうだ。まっすぐな思いが眩しく美しい。(仙田洋子)』

眩しいほどの若さと人間愛に満ちた句である。そして命の讃歌の美しい句でもある。

考えて見れば誰にでもこのような時期があった筈である。只、戦中派には「恋のころ」は戦争と向き合って自分の命を見つめていた時でもある。「再度、無言館」の記事にはその想いが滲んでいる。

それを思うとこのような句を何の躊躇いもなく詠める時代が、羨ましくも眩しく感じるのは思い過ごしであろうか。

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