« 創業の精神 | トップページ | 浜松からオートバイが姿を消す »

2006年9月21日 (木)

卒寿翁の句集「晩学抄」

最近身近な俳人から句集を頂く機会が多くなった。その中で出色な句集は、卒寿にして、なお矍鑠として後輩の指導をされている「野原春醪氏」から頂いた句集「晩学抄」であろう。

氏は大正3年2月の生まれと言うから92歳を既に越している。「馬酔木」及び「海坂」の各同人で、俳人協会会員でもある氏のこの句集は、「龍膽抄」「裏伊吹」「春日」に続く、第4句集になる。「十年ごとに句集を上木することが老生の楽しみ」という氏の、本句集は流石に枯れた人生観に満ちている。
Bangakusyou

句集の名前「晩学抄」は、
  晩学に励まむ畳替へにけり
からきているのではないかと思う。句集は春、夏、秋、冬、新年の5分類に整理されているが、ランダムに目についた句を拾ってみると
  耳遠くなって涼しき余生かな
  七十の吾子と鮎釣る昼餉酒
  万緑や卒寿肺活量参千 (筆者註:まるで怪物)
  とろろ飯再度所望の卒寿翁
  つつがなく生きて卒寿の盆用意
  冬耕の吾が影深く起しけり
  養生訓読んで風邪寝の卒寿翁
  年酒酌む卒寿米寿の兄弟
  賜りぬ九十歳の初手水
  百歳まで生きむ柚子湯を浴びにけり
等の句からは氏の元気さが伝わってくるし、逆に元気を頂く。
  帰郷子に持たす草餅搗きにけり
  かなかなや母の手紙の仮名綴り
  母の忌のはらから集ふ落葉焚
等には親子の情がそこはかとなく浮かぶ。矢張り長寿を全うする人は一人で成されるものではなく、ご本人のポジティブな気持と共に、支え支えられる家族家庭環境が大きな要素になっていることは間違いない。
  浜名湖の闇淡くせる夜焚舟
  姨捨の小稲架小稲架に入日燃ゆ
  蝗炒る香漂ふ妻籠宿
  戸隠の夕日に朴の実のこげて
  朴の実の真赤や鬼女の伝へ古り (鬼無里の鬼女紅葉の伝説)
  浜名湖をくらめ鴨来る澪標
等にはローカル色豊かに特色を詠っていて楽しい。

氏の生き方は将に恬淡として生を楽しんでいるように見える。句にもあるように、どうか百歳までもそれ以上もお元気で、ご活躍される事を祈念している。

|

« 創業の精神 | トップページ | 浜松からオートバイが姿を消す »

コメント

通信が変らないので心配していました。お元気のようで安心しました。
 しかしお元気な方が居られるのですね、みならはなければなりません。

 万緑や卒寿肺活量参千

すごいですね、わたしは
 末枯や喜寿の肺活千二百    です


私が好きだった作品
 晩学に励まむ畳替へにけり
 七十の吾子と鮎釣る昼餉酒
 年酒酌む卒寿米寿の兄弟
 百歳ま生きむ柚子湯を浴びにけり
 母の忌のはらから集ふ落葉焚
 姨捨の小稲架小稲架に入日燃湯ゆ
 蝗炒る香漂ふ妻籠宿

 やはり食べ物の句がはいりますね
 先日亡くなりました兄の口癖が
 百歳まで生きるでしたが、米寿でした。

              尚童

 

投稿: 尚童 | 2006年9月21日 (木) 20時50分

尚童さま
コメント有難う御座いました。
この2ヶ月ほど、諸般の事情からブログを書く気になれずご心配をお掛けしました。
野原さんの元気さを見習わなければいけないと思うのですが、矢張り家族や家庭環境が心から(うわべではなく)気を使っていることも見逃せない事で最近の社会の親子関係を見ていると、殊更その意を強くします。
尚童さまのお兄さんも百までと言いながら無念でしたね。ボランティア精神旺盛な尚童さまもご自愛下さい。
野原さんの句の中で他に好きな句は
 干し了へてくれなゐ深む桜海老
 水分の神みそなはす芹を摘む
 岩海苔を掻くや荒波躱しつつ
 皆詠みし遠郭公を聞き洩らす
 庭を吹く風のねばつく油蝉
 蒟蒻の花の妖しき暮色かな
 老漁夫のほまちに拾ふ流れ昆布
 棒稲架の並ぶ限りを望照らす
 松島の暮色曳きゆく渡り鳥
 岳よりの水を豊かに林檎熟る
 祖父の世の大戸下ろして除夜迎へ
 楮蒸す火の更けゆきぬ平家村
 万の手の散華に泳ぐ修正会
 そのかみの神饌田の址や若菜摘む

投稿: Alps | 2006年9月22日 (金) 07時38分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/99342/11975347

この記事へのトラックバック一覧です: 卒寿翁の句集「晩学抄」:

« 創業の精神 | トップページ | 浜松からオートバイが姿を消す »