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2006年2月 7日 (火)

勇気こそ

  勇気こそ地の塩なれや梅真白  中村草田男

俳人協会・俳句文学館発行の俳句カレンダー2月の巻頭句である。この句に就いては、奈良比佐子氏の鑑賞文がある。

白の暗示   
  『地の塩』とはマタイ伝中に見られる言葉で、塩がすぐれた特性をもつところから、転じて広く社会の腐敗を防ぐのに役立つ者をたとえている語である。
 この句は、昭和十九年の作品で学徒出陣の教え子への餞の句である。
 戦局に暗雲の漂いはじめた中での出陣であり、前途は明るいはずもない。だからとて生きて帰れとは口にできないご時世である。
 蛮勇を奮って自ら死を望むようなことをせず、真の勇気で踏み止まることこそ大切である。そのことを、冬の寒さをじっと耐えて早春に花開く梅の、その潔い白さをもって暗示したと考えられる。
 人口に膾炙された聖書からの語とはいえ、私たちの心にこの句の意がすんなりと入るのは、草田男が充分にこの語を理解して使ったからに他ならない。
 時は流れて今日この句を読み味わう時、今もまた世の風潮に流されない勇気が大切だという事を思い知らされる。」と、ある。

与謝野晶子は「…君死にたまふことなかれ…」と、旅順口包囲軍の中にある弟を嘆いて、直接的に詠った勇気があり又、その時代の雰囲気を感じるが、掲句の時代はそれを口にすることさへ出来ない時代だったことが、ひしひしと伝わってくる。この句の本意を知ると、「真の勇気」と言うものの困難さを感じるのは、城山三郎著「一歩の距離」にみられる通りである。

山口誓子の 「海に出て木枯帰るところなし」 も、教え子の学徒出陣時に詠ったものと聞く。山口青邨の 「子供等は野を焼く卿等何を焼く」と、教え子の卒業を祝い励ました明るい句とは違って、当然のことながら重苦しい切なさを感じる。俳句は矢張り具体的なものを通して心の様相を詠ったものに特に共感を覚える。
 

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