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2005年12月 7日 (水)

役に徹しきる

仲代達矢氏の「私の履歴書」(日経新聞)の連載が終った。その中に、五味川純平著「人間の条件」を映画化した際、その主人公である梶上等兵を、氏が演じるくだりがある。

俳優と言う職業も本当に役に徹しきるには、監督やカメラマン等と共に、かほどまでに努力するものかと改めて知って感動した。

「人間の条件」は、私も愛読した本であるから、殊更に強く感じた。わが国の戦争文学の記念碑的作品と発刊当時、評論家である臼井よしみが絶賛した作品で、今もその評価は変っていない。因みに本書は累計1300万部も売れたという。

主人公の梶は、インテリで強固な良心を持っているが、ひ弱ではない。梶を演じる撮影の一場面の記述には「小林正樹監督と宮島義勇カメラマンのリアリズムは徹底していて、行軍に疲れ切った兵隊たちの姿を撮る時には、カメラが廻る2時間も前から重装備で歩かされた。」

「痩せるために監督と私は眠らないようにした。不眠と疲労の極地でカメラの前に立った。梶はやがて力尽き、凍った地面に倒れ伏す。」

と、いった内容の記述が随所に出ている。私は、この映画は見ていないので、その迫真力をこの目で確かめては居ないが、原作や、この役に徹しきった記述を読むと、さぞかし素晴らしい映画になっていただろうと想像する。

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コメント

良いお話だなあ、と思いながら読んでいると、色々な処に想いが跳ぶ。そこで、直ぐに話の本筋を外れた脇道に話の逸れる変人の感想を書かせて頂くと、「人間の条件」が1300万部も売れた、と言う数字が信じられない思いです。
今年の夏ごろに、終戦60年とかで、歴史とか戦争とかに関わる文章を多く読まされて大層違和感を覚えていた私には、この同じ国で、とは信じられない。
いろいろと考えてみて、1300万人の過半数は寿命を終えて亡くなったのだと思えば納得出来ることに気が付いた次第。
本筋を外れたコメントで失礼しましたが、昔の芸人は、素晴らしかったですね。

投稿: 変人キャズ | 2005年12月 8日 (木) 03時26分

コメント有難う御座いました。
今日は12月8日。色々の想いの湧く日である。
「役に徹しきる」小文と、変人キャズさんの「御前崎初訪問の旅」の記事とに、立場と役割の相違はあっても、ある種の共通点があるように思う。
私も1300万部と言う数字に驚いて、仲代氏の履歴書に書かれている、この部分を確かめたが間違いない。お説のように私も考えた次第です。

投稿: Alps | 2005年12月 8日 (木) 07時57分

今年の6月頃に、人の出逢いに就いて書いた時にスペースの関係で触れられなかった話の一つに、仲代達矢と黒澤明監督の話がある。私は最近は日経を読まないので「私の履歴書」にその記述が有るかどうか分らないが、毎日新聞1997/9/2で読んだもので、この二人の人物の芸に掛ける思いを書いた記事である。「七人の侍」にセリフ無しの5秒間出演の端役、仲代を黒澤が半日間しごく経緯が後の「用心棒」出演に連なっていく。私は芸の話よりも、黒澤の眼の凄さとか、この二人の出会いの点で、興味深く読んだ記憶がある。

投稿: 佐久間象川 | 2005年12月12日 (月) 04時10分

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